テレビ会議で海外の国際機関や連携協力研究機関と密接な連携を図る

岡山大学 大学院環境学研究科では、従来の工学・農学・医学の学問体系を超えた学際的研究の実施を目標としています。また、大学院環境学研究科が中心となり、地域において持続可能な社会を創造していくための人材育成を目標として、国連教育科学文化機関(UNESCO)にユネスコチェア(ユネスコ講座)の設置を申請し、2007年4月に認証を受けました。

このユネスコチェアプログラムにおいて、海外の国際機関や連携協力研究機関と密接な連携を図るために、2008年3月、遠隔会議・遠隔教育システムを導入しました。

導入経緯について、大学院 環境学研究科長 教授の阿部宏史様と、大学院 環境学研究科 生命環境学専攻人間生態学講座 国際保健学分野 准教授の山本秀樹様に伺いました。

「大学院環境学研究科は、2005年に設置されました。アジアにおける環境学の拠点となり、アジア各地の研究機関や国際機関と連携した国際的教育・研究に取り組んでいます。その中でも特に、遠隔医療実験や災害時の緊急救援情報システムなどの綿密な研究のために、テレビ会議システムの導入を検討していました。幸いなことに大学から承認が得られたため、今回の導入となりました」(阿部教授)

「過去に、ネパール国への小児外科支援を目的とした遠隔医療支援システムの実験を行ったことがありますが、その際にはインマルサット(INMARSAT)衛星通信を利用しました。スリランカへ大学院生を派遣した際にも、インマルサット回線を使ったスカイプで岡山大学から指導していましたが、その後、P2Pソフトの使用が大学で禁止されたこともあり、テレビ会議システムの導入に踏み切りました。テレビ会議を活用して、海外の環境分野の教育・研究機関の研究者らと直に話しあえる環境を築くことも念頭にありました」(山本准教授)

テレビ会議システムの選定にあたり、山本准教授は世界銀行東京開発センター様や国際連合大学(国連大学)様を訪問し、両機関が主催する国際電子会議や国際共同講座に岡山大学のネットワークから接続できるかについての相談・検討を行いました。その際、世界銀行様や国連大学様からテレビ会議システム選定についての助言を受け、2008年1月、ユネスコチェアプログラム運営委員会の下に、阿部教授を委員長とする機種選定のための小委員会を開きました。

 

「小委員会では、設置場所や選定機種の仕様、遠隔講義の学習管理システムLMS(Learning Management System)などの管理体制について協議しました。
その上で、ネパール国への遠隔医療実験にも携わり、また実社会においてシステムエンジニアとしての経歴を持つ鹿嶋院生にテレビ会議システムの候補をあげてくれるよう依頼しました」(山本准教授)

機種選定を担当した鹿嶋小緒里様は、大学院 環境学研究科 生命環境学専攻人間生態学講座 国際保健学分野 博士後期課程2年生です。インターネットでテレビ会議システムのメーカーを調べ、VTVジャパンへご相談いただきました。

「VTVジャパンはテレビ会議システムのマルチベンダーとして、取扱メーカーが豊富です。また、Webサイトに掲載されたテレビ会議システムに関する解説が分かりやすく、相談する上で安心感がありました」(鹿嶋様)

テレビ会議システム導入直後の2008年3月、国連大学API(アジアパシフィックイニシアティブ)ワークショップおよび、世界銀行パブリックセミナーに、岡山大学から導入したテレビ会議で接続して参加しました。APIは、FASID(国際高等開発教育機構)と国連大学、慶應大学、ハワイ大学などが連携して運営する環境に関する国際共同講座です。

「環境学研究科で導入したテレビ会議システムはHD対応モデル、国連大学や世界銀行のシステムはSD対応モデルと、映像圧縮方式に違いはありますが支障なく接続できました。HD対応モデル同士で接続した場合の画質より劣りますが、十分な映像・音声品質を得ています。
実は、HD対応モデルを選定した理由には、国連大学からの勧めもありました。現在SD対応モデルを使用している機関でも、将来的にはHD対応モデルの導入を考えているのだという印象を受けています」(山本准教授)

 

最後に、今後の展開についてお訊ねしました。

「今後、テレビ会議システムを活用していきたいプロジェクトは数多くあります。

まずはベトナム・フエ大学との接続です。岡山大学ユネスコチェアの組織として、フエ大学に分室を開設しています。そこで7月または8月頃に集中講義を開催する予定ですので、テレビ会議システムを利用し、岡山大学から遠隔講義を行いたいと計画しています。

また、APIへの正式な参加がFASIDと国連大学から承認され、2008年9月より参加可能となりました。この講座へもテレビ会議システムを接続し、現地参加できないメンバーは岡山大学から遠隔受講する予定です。その際に、大学の正式な単位として認定してもらえるよう働きかけています。

セットトップ型モデルのVega Pro Sや電話型パーソナル・モデルのTheseusは、国内はもちろんのこと、バングラディシュやベトナムなど海外の協力機関に持参して、回線事情など使用環境を確認し、状況に応じて常設への推進を図っていきたいと思います。

さらに、“Kominkanサミット”にも活用できそうですね。日本では公民館での学習活動を通した地域づくりが盛んに行われていますが、アジア各国にも非識字者に対して識字教育を提供すると共に、住民を中心とした地域づくりの場となっているコミュニティ学習センターがあり、その運営支援を行うユネスコ関係者の目が日本の公民館に向けられています。環境学研究科では、日本の経験や教訓をアジア版公民館であるコミュニティ学習センターの運営担当者と共有することが有意義な国際貢献になると考え、ユネスコチェアプログラムの一貫として“Kominkanサミット”を位置づけました。コミュニティ学習センターとの情報共有にも、テレビ会議システムを活用していきます。
2008年9月24日には国連大学と岡山大学を接続し、食とESDに関する地域レベルでの取り組み(Kominkanで実施可能な取り組み)を検討する国際会議を行う予定です。必要に応じて、海外の大学も参加します」(山本准教授)

*内容は2008年取材当時のものです。

 

取材後日の2008年5月26日に、世界銀行東京事務所・東京開発ラーニングセンターにおいて、世界銀行?GRIPS開発フォーラム共催のパブリックセミナー 「2008年春の世界銀行・IMF合同開発委員会の成果」が開催されました。

当日は、テレビ会議で国内主要大学5校を接続し、基調報告やコメント発表の後、約35分間の質疑応答が行われました。もちろん、岡山大学大学院環境学研究科様も参加し、質疑に加わりました。